『秘密』 [BL小説]


秘密 (ホリーノベルズ)

秘密 (ホリーノベルズ)

  • 作者: 木原 音瀬
  • 出版社/メーカー: 蒼竜社
  • 発売日: 2007/04/21
  • メディア: 新書

木原音瀬さんの作品は吸血鬼シリーズを読んだ事があるだけでした。
アマゾンのレビューを読むと、必ずと言っていいほど
「評価が極端に分かれる作家」と書かれてますので、
ちょっと手を出しにくい気がしていたのですが…。

冒頭部分でなにやらシリアスなムードが漂っていますし、
甘さの欠片もない描写でもあり、なかなか波に乗れないでいたのですが、
途中からグッと来ましたよー。

いわゆるBL小説のお約束なパターンからは大きく外れる作品だと思います。
なんとなく…ハリウッドではないフランス辺りのサスペンスものの映画のような…
いえ、オシャレとかいう意味ではなく、むしろ不気味さの部分がです。

逃れようのない破滅に向かってまっすぐ続いているように見えるお話ですが
意外な展開を見せていきます。
そして、ハンディを背負った人間同士の心の繋がりように、
言い様の無い、胸をトンと突かれるような、目を見張るような思いになりました。

不気味なサスペンスであり、BLであり、純愛。そんな一冊でした。

ゲームもそうですが小説も漫画も、中味がBLだとなかなか家族の前では手に取れなくて困ります;
それと、頭が痛いのが保管場所!
あまり買わないように気を引き締めているつもりなのですが
いつの間にかそれなりに量が増えて来て・・・;
段ボール箱も1つから2つ、2つから3つになり、と増える一方です。
こっそり保管しておくのも苦しくなってきました。








早い段階で一度「本当は殺してなかった、思い込みだった」という事なんだろうな~、と予想しながら読み進めていたのです。
ところが海岸へのドライブのときに、充が中味を見せろと迫ったあげく、だまって海に投げ捨てるのを手伝うところを読んでわからなくなりました。
決定的な部分を書かずに読み手まで一緒に迷宮の中に放り込まれるのですね。
とてもドキドキして楽しめました。木原さんの“一筋縄ではいかない度”を甘く見てました(笑)

充が自首するくだりで、啓太が感じる葛藤はなんとも利己的なものですが、表現が実にリアルで共感できるんですよね。
自分自身にも確実にある弱さやズルさを確認させられるような気分でした。
充の行動によって、啓太はどんどん追い込まれて行く。
でも啓太はそれを乗り越えて充に会いに行きますよね。
いつのまにかお互いに不可欠な存在になっていくんですね。

二人はともに、普通の生活に支障をきたす事情を抱えています。
その“普通じゃない部分”がさらにお互いを必要としていて、まさに『伴侶』というにふさわしい関係になって行くお話と読めるわけですが、実は良く考えてみると“世の中には欠けたところのない人間”など、タダの一人もいないのです。
つまり、木原さんのこのお話で描かれたのは、とても普遍的なお話なんだと思うのです。
男性同士である事、ディスクレシアや妄想癖などの要素を取り払った骨格の部分そのものに既に感動すべき要素があるな…と思いました。

本当に読み応えのある一冊です。
木原作品に縁のなかった方におススメしたいです。
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